【目的と概要】
 
 当ゼミは、今年1月に発足したアメリカのバイデン政権の外交と世界戦略を追いながら、国際政治学の最新の文献を読み、チーム(アメリカ班、中国班、日本・アジア班、欧州班、グローバルガバナンス班)に分かれて調査・分析を行って、ゼミ生が自分なりの問いを立てて、その答えを導き出す研究を行うことを目的とします。
 バイデン政権は、分野に応じて対決・競争・協調という3つのアプローチを使って中国に向き合っていくといわれています。そのとき、中国や日本、東南アジアやヨーロッパ、国際機関はどのような影響を受け、またそのように反応してアメリカに影響を及ぼしていくのでしょうか。その先に待っているのは、対立と分断の世界なのか、それとも協調と包摂の世界なのでしょうか。当ゼミは、米中関係に軸足を置きつつ、それが日本や東南アジア、ヨーロッパといった諸地域、さらには国際機関での多国間外交、宇宙やサイバー空間をめぐる国際関係とどのように相互作用しあうのかに目を向け、研究を行います。
 ゼミでは、例えば次のような問いを立てて、調査・研究に取り組みます。米中間における先端技術、経済、デジタルインフラ、地政学的影響力、情報、軍備や各国世論などをめぐる競争は、どのように推移し、東南アジア諸国を含む東アジア地域やヨーロッパをどのように変えていくのか。台湾をめぐる米中危機が起こるとすれば、それはどのような条件の下で発生すると考えられて、日本にどのような影響が及ぶのか。ヨーロッパで、中国の経済進出を受け入れる国々と、中国への警戒を強める国々が出てきているが、それはヨーロッパ諸国間の国際関係や米欧関係にどのような影響を及ぼすのだろうか。気候変動問題やパンデミック、インフラの開発援助といった、グローバルな課題への取り組みは、米中間の協力を導くのだろうか、それとも米中間の競争的な力学は、そうした国際協力を停滞させるのだろうか。なによりも、アメリカが卓越した地位を築いてきた時代が終わり、新たに浮上してくるこうした様々な争点や課題に、日本はどのように向き合うべきか、そして国際政治を対立・分断よりも協調・包摂の方に導くいくために日本にやれること、果たすべき役割とは何なのだろうか。単なる一国主義的な平和主義・理想主義に耽溺せずに、国際政治の現実を冷静に見つめつつ、やれることとやれないことを見極めて、日本が諸外国と連携して「打てる手」とは何かを考究したい。
 こうした大きな課題を立て、単なる思い付きで議論するのではなく、国際政治の理論と歴史を学びながら、国際関係の構造とプロセス、そして文脈を見極める能力を養います。こうした訓練を積むことによって、社会人になってからも活きるような、様々な出来事を多角的・複眼的に捉えて、物事の原因や問題のありかを突き止める力を身につけます。さらには、合同ゼミにおける外交シミュレーションなどを通じて、その問題に対処するために何をすればいいのかということを考え、行動を起こすための実践的な力も身につけます。
 
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