10/13公開ゼミ~普天間基地移設問題

一年生のみんな~、先日はたくさん来てくれてどうもありがとう!!
まだまだ選ぶ時間は残されてるからじっくり決めてくださいね。

そしてご縁があれば、森ゼミにぜひ・・・(笑)

今年の公開ゼミは専門用語のオンパレードで難易度MAXでした(汗)
今回の公開ゼミが意味わかんなくても、全然平気です(笑)今回の公開ゼミの形式はイレギュラー中のイレギュラーですから!
ゼミ生としても、普天間問題は一つのチャレンジだったので、ゼミ生の限界がよく見えたんじゃないでしょうか?
「やっぱり森ゼミすごいな・・・」とか
「案外、詰まったりするのね(笑)これぐらいが丁度いいかも!!」とか
思ってくれたことと思います。大々的に公開ゼミをやっていないゼミも多くあるので、いい参考基準になったと思ってもらえれば幸いですにひひ

というわけで、おさらいをしてみましょう。
意味不明なところが、すこしでもなくなればと思います!!

まず、「普天間基地移設問題」っていったいなんのことですか?って話からです。
・1995年9月 米兵による少女暴行事件
小学生の女の子が海兵隊員によって、暴行を受けるという事件が発生。しかも犯人である海兵隊員への起訴は日米地位協定の定めによって、実現しませんでした。そう、被害者やその家族は泣き寝入りせざるを得なかったわけです。これに腹をたてた沖縄県民は大規模な抗議集会を実施。

ポイント!~日米地位協定~
沖縄で犯罪を犯した米兵は日本の警察に捕まらない限り、アメリカの法律で裁かれるという協定です。米兵は軍法会議にかけられるので、日本国法に比べて非常に罪が軽く、被害者の人権を無視したものといえるでしょう。実際に犯罪を犯した米兵は、地位協定の優遇を受けるために急いで基地に逃げ込むということまであります。

反基地感情が高まり、このままでは日米同盟が崩壊しかねないと感じた日米両政府は・・・
・1996年 宜野湾市にある普天間基地を沖縄に返還することを合意した。

ポイント!~なぜ普天間基地に話が移った?~
普天間基地は沖縄県宜野湾市の中央に位置する海兵隊の飛行場で、住宅密集地にある為騒音問題、事故の際に安全に緊急着陸できる場所がないといった問題を抱えていました。沖縄県民の不満の大きな地区の一つだったので、なんとか普天間基地の状況を変えなければ!という話になったわけです。
ここで問題なのはアメリカは普天間基地を返還するが、かわりに新しい飛行場を日本に用意してもらうことを要求したということです。
この新しい飛行場の場所が決まらない・・・これがまさに普天間基地移設問題です。

2006年 辺野古案成立
時は自民党最盛期の小泉時代。96年の返還合意から10年かけて(ここですでに10年かけて!!)移設先をいくつも検討した結果、名護市の辺野古に決定。
これから環境アセスメントの調査が始まります。

・・・しかし、それからというものの・・・
辺野古案は辺野古の海を埋め立てて作る飛行場なので、サンゴを殺してしまいます。その他絶滅危惧種であるジュゴンの生息地であるために、環境調査を妨害する人たちが出てきて調査は難航してしまいました。調査を終えなければ工事に取り掛かれないと法で定めているので、ズルズルと時間だけが過ぎていったわけです。

そう、辺野古案は騒音対策と引き換えに甚大な環境破壊を行わなければならないのです。

日米関係において、騒音と環境はどちらにウエイトが置かれるのでしょうか??

2009年 鳩山民主党成立 普天間基地の県外移設を主張
しかし、有力な移設先を見つけられなかったのはみなさんもご存知のとおりです。

2010年5月
辺野古案で日米合意成立。

しかし普天間問題が日本中でクローズアップされてしまった以上、辺野古に立ち返るというのは本当に正しい選択なのでしょうか?

それでは

4班それぞれの立場の確認です。
沖縄県班
・沖縄は日本の国土のわずか0.6%しかないのにも関わらず、在日米軍施設面積の割合は7割を超える。
→沖縄に負担をかけすぎている。負担の正当性がない。

・米軍のヘリコプターや飛行機の騒音で、深刻な健康被害が報告されている。

・米軍の犯罪と地位協定は改善を図るべき問題だ。

・現行案の辺野古には絶滅危惧種のジュゴンが生息しており、美しいサンゴ礁もある。埋め立てによる環境破壊は深刻である。
県外移設を主張する!!

日本政府班
・日本は憲法第9条で、自衛力しか持たないことを定めています。つまり日本に武力行使をする国が現れた場合のみ、日本は自衛隊を国防の為の武力として出動させるわけです。しかし現実には、自衛の為の武力行使だけでなく報復ができなければ国家の安全保障は成り立ちません。「やったら、やりかえされてかえって痛い目にあうからやめておこう・・・」敵国に戦争をさせないこと=抑止はざっくり言えばこんなスタンスが国家間で共有されていることを指します。つまり日米同盟の場合、在日米軍は攻撃専門、自衛隊が防御専門として戦う準備を整えていることで、東アジアの安定を保っているわけです。
→在日米軍は日本の安全保障上の要である。

・沖縄は今、東アジアで不穏な動きを見せている北朝鮮・中国との有事の際に出動するのに便利な位置にある。(国際政治用語で、軍事・経済などなんらかの要因で政治的に重要である地域のことを「地政学的重要性を持つ」なんていいかたをします。)→沖縄の地政学的重要性

・普天間には現状として、普天間基地周りに住宅地が密集しているせいで、事故・騒音の問題がある。
→辺野古は事故・騒音の問題を解決する
県内移設を主張する!!

アメリカ政府班
・沖縄でなければ、東アジアにおける安全保障、中国・北朝鮮に対する抑止が維持できない。
→県外移設は不可能

・米国政府はこれ以上議論することに関心なし。
→移設先が決まらない責任は日本政府にあるというスタンスです。

・日米合意の迅速なる実施を日本政府に求める
→沖縄班はNO!といってる辺野古案のことです。

県内移設!

アメリカ軍班
・米軍基地は沖縄でなければならない。
→●東アジアの各地域に近い
●飛行場と訓練所が50KM以内にある。
・普天間基地と同等の規模の基地が欲しい
→●現行の辺野古案では、有事の際に必要な面積の40%しかない。(戦争となったら、アメリカ本土やハワイから応援部隊が来ますが、辺野古案では応援部隊を受け入れるだけのキャパがないんですね。)
●1800Mの滑走路は飛行機の使用を想定していない

《ここは技術的な話なので知らなくていいです。どうでもいい人は読み飛ばしてください。》
なんでヘリコプターの飛行場なのに、滑走路の話をしてるの?と思いましたよね?
ここで軍事アナリスト(?)江本の解説♪
在日米軍が2012年から本格的に運用する次世代ヘリコプターはなんと、
飛行機として使えるヘリコプターなんです!

どんな風に飛ぶんですかって?口じゃ説明しにくいので、ユー○ュ○ブでどうぞ(笑)

ヘリコプターはヘリコプターなんですけど、荷物をいっぱい積んでいたら、短い滑走路が必要になっちゃうんです。だから1800Mの滑走路が必要になった。でも、それはあくまで間に合わせで実際に戦争になったら輸送機やら戦闘機やらいっぱいやってくる。そのときに十分な長さを持った滑走路とはいえないんですよ!!
《以上、軍事アナリスト(?)江本のどうでもいい解説終了!!》

以上、アメリカ軍班は
辺野古+アルファを要求する!!

これから日本国内協議とアメリカ国内協議を経て、日米協議(政府の代表同士の協議)を行いました。
んで!2(two)レベルゲームって話をおぼえていますか?
森ゼミブログ-2レベルゲーム解説

よく、国際問題に関して「アメリカはこう思っている、一方日本はこう思っている」という言い方をしますね。でもそれってまるで一国の意思が固まっているかのような印象を受けませんか??
実際はそんなことはありませんよね。
たとえば今回の場合は、
日本政府の目指すところと、沖縄県の目指すところは違うわけです。

だから国同士でなにかを決めるときには国家間「レベル」だけじゃなくて、

国家間+各国内

で議論をすすめる必要があります。国際レベルと国内レベルの二つだから2レベルゲームというわけです。

日常の議論でもそうですが、お互いが納得するためには歩み寄りが必要ですよね。

この歩み寄りにより、お互いが合意できる事項・範囲が一致(この一致のことを『win-set(ウィンセット)』といいます)した場合に新しい物事を決めることができるわけです。

なんで普天間基地移設先が決まらないか?それは日米両政府が譲れない部分が多すぎて、自分から歩み寄るなんてできないし、相手に歩み寄りを引き出すことも難しいから、
というわけです。

さてこれから細かい議論の流れをアップすると、膨大な量になるので、争点をまとめます。

・沖縄県外移設を主張する日本側。しかしなぜアメリカ側はかたくなに県内移設を主張するのか?
○沖縄県外には、飛行場と訓練場をセットで移設できる土地などない。
→ヘリコプター運用の『50KMルール』です。鹿児島県徳之島などは実際に政府で最近取り上げれた案ですが、地元の反対のみならずアメリカ側の反対もあったようです。なぜかというと徳之島は沖縄から200KM近く離れていますが、訓練場は沖縄にあります。もし飛行場を移設しても訓練場も徳之島飛行場の近くに建設しなければ、訓練は引き続き沖縄の訓練場で行わなければなりません。
せっかく沖縄県外に移設したのに、訓練毎に毎日のように沖縄県内に戻ってしまうのでは意味がありませんよね?しかもアメリカ海兵隊が鹿児島から沖縄に飛ぶのは、途中で給油が必要な場合も発生し、なによりも貴重な訓練時間を移動時間で浪費してしまうのでこれは承認できないわけです。

・日米地位協定の改定を迫る日本側。なぜアメリカはそれができないのか??
○現行の地位協定では、日本の警察が捕まえない限り米兵を日本国法で裁くことはできません。これに沖縄県民は納得がいかないのです。具体的には、裁判権の全権移譲を要求しましたね。

さてアメリカ側。
もちろん自分たちに有利なルールは固持していきたいというのもありますが、日米地位協定を変えただけで実は全世界的にアメリカの軍の運用に問題をきたす可能性があるのです。
全世界的に海外駐留軍を派遣しているアメリカ、それは軍の派遣先国との信頼がなければ軍を海外に置くことなどできません。

もしここで日米地位協定を改定したとしましょう。アメリカは同様の協定をあらゆる国を結んでいます。だから軍の派遣先国との信頼関係を崩さないために、他の国とも同様の改定をしなければならないのです。

ゼミ中にアメリカ側は、犯罪防止教育を行った結果犯罪件数が実際に減ったことを上げ、それなりの改善努力をしていることを説明しました。また、アメリカ軍内規則を厳罰化することも提案しました。

森ゼミブログ

さて日本側は裁判権の全権移譲、そもそもヘリコプターが沖縄に降り立つこと自体が問題なんだというかなり強硬な主張で押していきましたね。
アメリカは必死でどの部分で歩み寄ろうか、考える必要が出できました。しかしアメリカ側としては海兵隊運用の技術的側面で無理が生じたり、日本に甘くすると他のアメリカ軍駐留国から文句をいわれたりするので、簡単に首を縦に振るわけにはいきません。

そんなこんなで時間切れとなってしまいました・・・orz

でも今日の公開ゼミで重要なのは移設先がどこということよりも、日米関係改善のために日米両政府がどれだけ歩み寄れる余地があるのかを検証することにあったと思います。

日本側としては、日米同盟のそもそもの役割やアメリカ軍の運用方法に理解を示して同盟関係改善に努める必要がありますし、
アメリカ側としては全世界的に軍を展開するための重要拠点である沖縄に負担をかけすぎていることを理解しなければ、最悪の場合は沖縄撤退を余儀なくされるでしょう。そのときに痛い思いをするのは、実はアメリカ自身なのかもしれません。

日米両政府の主張と譲歩です
日本
主張
○環境問題、騒音問題、米兵の事件・事故 の改善
○地位協定の定義・罰則の明確化
譲歩
○県内移設
○環境アセスメントの即時実施

アメリカ
主張
○移設先の明確化
○環境アセスメントの即時実施
譲歩
○地位協定の追加条項
○新しい軍内規則の作成

さて最後に森先生のまとめです。
2レベルゲームでは、お互いに合意できる範囲(=win-set)を作り出すことが必要になります。でも議論の場ではどこがお互い納得できるかを探ることも大事ですが、いかに合意の邪魔となる主張を取り下げて譲歩をする/引き出すことが大事になってきます。
だから政府-国内レベルで主張が過激化しないように、譲歩するとすればどこに目をつぶるかを調整しなければなりません。
また議論が進んだ段階で主張内容を増やしてしまうのは、議論の長期化を意味するので避けなければならないでしょう。

○早く決定したいのは誰なのかという視点
今回の議論ではこの視点が欠けてしまい、特にアメリカ側はこれを使えなくて宝の持ち腐れになってしまいました。
普天間基地移設問題を一刻も早く解決したいのは、日本政府です。日本政府はそもそも支持率が低迷して危機的状態です、国会議員は常に『選挙に勝つ』という視点があるので、一刻を早く決断を下すことが大事になってきます。
一方沖縄は昔から続いている基地問題を解決するチャンスとして、議論を長期化させてでもアメリカ側に譲歩を引き出そうとしますし、アメリカ側としても条件のいい基地を手に入れるにこしたことはないので粘ります。

今回は、日本政府にとって沖縄は味方ではなく、かつアメリカ政府・アメリカ軍の意見を取りまとめるというハードな役回りでしたね。二年ゼミ長と三年ゼミ長が日本政府に配属されたのは、単なる偶然なんでしょうか??(`・ω・´)

以上、公開ゼミ議事録終了です。長くなりましたがお疲れ様でした。

今回のように時事ネタを扱うことは、まれですがそれでも今年はたとえば韓国哨戒艦「天安号」の沈没を北朝鮮の仕業だとしたら今頃北朝鮮は何を考え、次にどんな手を打ってくるのかを議論したりしました。

アメリカに絡む国際政治ネタは毎日ニュースでも取り上げられていますし、いくら「自分はニュースを見ない人間だ!!」っていっても名前だけなら知ってるネタはゴロゴロ転がっているわけです。
難しく構えずに、身近なところから問題意識を持ってくれれば十分です。アメリカ外交研究はそれぐらいとっつきやすく、だからこそ自分達みたいな学生でも相当なレベルまで議論を持っていくことができます。

 

 

 

広く、しかも深く!!

 

それが国際政治のなかで抜群にメジャーなジャンルであるアメリカ外交の特権です♪

今年の入ゼミレポートは中国の台頭について考えていただきますが、はっきりいって「本気で正解を書こうと思えばゼミ生でもそれなりに時間の必要な課題」だと思います。だから、絶対に難しく考えないでください。森ゼミ生に最終的に必要なのは

「問題の構造を把握すること。切り易い視点から問題を

 

議論すること」

につきます。
それは最初と最後の森先生の解説を見てくれたみんなにはわかると思います。
全然マニアックな知識を使わなかったでしょ??
だから入ゼミレポートも、日ごろニュースで言われている以外の視点で問題を考えてみたりしてください。(もちろんニュースの視点だって十分にすばらしいですけども)それだけで十分に独創的で、かつ人よりも視点が多いことでより問題に対する理解が深いと思います。

どうしてもすっきりと書けないときは、受験時代に立ち返ってとにかく埋めるだけ埋めてください。
解答用紙を埋めることもできない人は、さすがに失格ですし、埋められる人はそれだけでもやる気を評価できます。
ですからがんばってくださいね!!

次週10月20日水曜日の4・5時限は再びF405教室で公開ゼミを行います。
次回は今年の主要テーマである、同盟論を行います。

普段と同じ形式ですので、素の森ゼミを見に来てください。

以上、森ゼミの軍事アナリスト(?)江本がお送りしました。