11/17 ゼミ C班発表
C班はThomas Risse-KappenのCollective Identity in a Democratic Community: The Case of NATOという文献について発表を行いました。
まず問題の所在は
・なぜ第二次世界大戦後超大国だったアメリカはNATOに加わったのか。
・なぜNATOの協働パターンは冷戦後も発展したのか。
・なぜNATOは冷戦後の安全保障機関の中で最も強力なものなのか。
・リアリズムとNATOの起源
構造的現実主義への批判
構造的現実主義=国家はバンドワゴンよりバランシングを選択する。
→西欧諸国はアメリカではなくソ連と同盟を形成することになる。
脅威均衡論への批判
脅威均衡論=①総合力・地理的近接性、②攻撃能力 ③攻撃的イデオロギーを重視
→①アメリカの政策決定者が自国が防御的立場にあると考えていたことになる。
③リベラリズムでより明確に説明可能。
・リアリズムとNATOの協力パターン
構造的現実主義への批判
構造的現実主義=小国の同盟への貢献は不可欠ではない。
→冷戦時もヨーロッパの同盟国はアメリカの外交政策に影響を与えていた。
・リアリズムとNATOの耐久性
構造的現実主義=「冷戦後、NATOは消えてゆくだろう。」
つまり結論は、同盟理論としてのリアリズムはNATOの起源、相互作用パターン、耐久性を説明するのに不確実である。
次はリベラルコンストラクティビストのアプローチ
=制度的制約、規範を重視
これらによって
・民主主義同士はお互いを安全だと認識する。
・それらの国は多元的安全保障コミュニティを結成する。
・それらの国は障害を乗り越え協力し同盟のような国際組織を結成する傾向にある。
つまり組織内の相互関係を規定している規範によって民主主義の価値観が共有され、国内に似たような政策決定規範が生まれる。
つぎにNATOの起源のリベラル的説明
・NATOは西欧と東欧での米ソの行動が脅威となり、大西洋の安全保障共同体として組織された。
・民主主義の原理と意思決定ルールを基礎とした組織の多角的な性質は、共通の価値と集団のアイデンティティをもたらした。
結論は
・多国間主義の規範と協同の意思決定は、アメリカの覇権を覆っているきれいごとではあるが、一方で国際的な関係を形作った。
・ヨーロッパの安全保障に関するNATOの決定は、たかが国内の関係として概念化することが出来ないと言うことを示している。それよりも相互作用のパターンは脱国家、脱政府の同盟形成のプロセスによって影響を受ける。
続いては具体的な事例です。
スエズ危機
・スエズ危機によって、関係を統治する基本的な規範が侵略されるとき、会談や実行(行動)について理想的(リベラル)な期待が持てると確信した。
・同盟国缶のコミュニティの意味、目的を危うくするような規範の侵害はコミュニティの対立、衝突、回復に導く相互作用を理解する鍵を提供する。
キューバ危機
・海上封鎖、非侵略誓約、ミサイル交換の秘密外交は完璧な合理的決定であった。(しかし、合理的な決定の説明は同盟の内容を考慮しなければ、明確でない。)
・同盟共同体は国内と同盟政治の区別の不足を説明する。
・キューバ危機の間、アメリカは評判と信頼性において危うくなったが、このような心配は従来の同盟理論に基づくより、集合的に共有した価値を基礎とした安全保障共同体の枠組みの中でより理解することが出来る。
最後に、“NATOの特徴とは何か”ということが書かれています
(筆者はNATOのことに対してリアリストが、十分な説明が出来ていないことに基づいて、論じている)
・北大西洋同盟(North Atlantic Alliance)は多元的に組織された安全保障共同体を象徴している
・民主主義国家は互いに戦争をしないだけでなく、集約化されたアイデンティティ(collective identity)の発展にも努める。
・組織は規範や法律によって特徴付けられる。つまり、規範や法律を制定することは共同体の特徴やそこに属す人々の集約化されたアイデンティティを強めることになる。