厚木基地シンポジウム パート3
ゼミ合宿で忙しかったということもあり、ほったらかしにしちゃいました
パート3では、講演終了後のイベントについて書きます。
講演終了後は、厚木基地の60周年記念式典が行われました。
これは60年前の厚木基地開基地式典を再現しようというものです。
会場をでるなり、シャトルバスにでるなりだだっ広い芝生のグランドには、数十人のブラスバンドと40~50人の制服姿のアメリカ海軍の方々が厳かに整列していました。
この式典では同時通訳はなかったのですが、部隊名を読み上げた後に部隊の到着を合図するブラスの短い演奏をするということを繰り返し、全部隊の到着を確認するとここ厚木基地で日米同盟の維持のための任務を全うすることを再確認していました。
所属部隊読み上げに対して、サーベルで合図している様子。
式典が終わると、レセプションが行われました。
ルース大使のスピーチがここでとり行われ、日米同盟における日米の連携を強めていく必要性などを話されていました。
立食でのレセプションでしたので、ここに居合わせた人々と自由に交流を深めることができました。
自分・・・英語がからっきしダメなので、アメリカ軍関係者に話を聞くことは早々に諦め・・・
海上自衛隊の方々から自衛隊の現状について、質問を投げかけてみました。
Q.「厚木基地で日米の合同訓練は実施されているのですか?」
A.「厚木ではしていません。というのも、アメリカ海軍と厚木基地海上自衛隊の航空集団では、担っている任務の目的が異なるために、共同での訓練が不可能だからです。アメリカ海軍は空母ジョージワシントンを使って、攻撃的な任務を想定しています。しかし我々、海上自衛隊の航空集団では対潜哨戒機を使って、シーレーンの安全確保であるとか、不審船などの領海侵犯を監視する任務に就いております。海上自衛隊にはアメリカ海軍を支援することが期待されていますが、それは直接敵の艦船を攻撃することではなく、敵の艦船を発見してそれをアメリカに伝えることにあるからです。」
Q.「航空自衛隊がアメリカの空母の支援的な役割を果たすということはあるのでしょうか?」
A.「アメリカの空母の役割は、パワープロジェクションといういいかたをしますけど、近海に出ていくだけでも抑止の効果をもちます。
航空自衛隊の主要任務は、敵国機の迎撃にあります。F15(航空自衛隊の主力戦闘機)は制空戦闘機といって、日本の領空における航空優勢を確保する任務がメインです。一方アメリカの空母艦載機は、領海侵犯した船を相手にしています。このように目的が異なるので、なかなか共同というわけにはいきません。」
Q.「対潜哨戒機のP3Cがどのように不審船や潜水艦を探しているのか具体的に教えてください」
A.「まず、潜水艦というのは水の中にいますから、見えないんですよね。目で探すというのは、まず無理ですね。でも広い海にいる潜水艦を探すというのは、湖に落とした指輪を探すようなものです。見つけるのは非常に困難ですね。しかし、あらかじめどのあたりに落としたという情報があれば、探す範囲を絞ることができます。海上自衛隊においては偵察衛星であるとか、付近を航行している船が潜水艦がいたのを見ましたとかいう情報を頼りに、探す範囲を特定します。P3C一機があれば、四国ぐらいの海域であれば監視が可能です。方法としては、ソノブイっていう、一種の魚群探知機をP3Cから海上に落として索敵をすることにはなりますが、それも全く手掛かりのない海域を探すというのはお金も時間もかかってしまいます。日本の海岸線がものすごく長いのでそれを全部カバーしようとなると、情報が頼りになるわけです。」
Q.「海上保安庁と海上自衛隊のすみ分けとはどのようなものですか?」
A.「基本的に海上自衛隊は海上偵察権がないので、はっきりいってなにもできません。なにかあったら、正当防衛・緊急避難あたり対応しかできません。海上警備行動などが発令されない限り、我々にはなんの権限もありません。」
次はソマリア派遣に携わった方の話を聞きました。
「実は、日本近海での哨戒任務よりもソマリアでの海賊監視の方が搭乗員としては楽です。海賊船は潜水艦と違って目に見えますからね。海賊がロケット砲を持っている可能性もありますが、ロケット砲の射程範囲外(高度1000メートル以上)を飛行していれば、安全上の問題もありません。もし海賊船を発見すれば、各国に通報して対処する必要があるのでそういったところでは少し任が重いかなとは思いますけど。
普段の訓練は、戦術航空士といってコンピューターを使って作戦行動を組み立てる人の訓練や、もちろんパイロットの訓練も行っています。」
レセプション会場にいたのはほとんどが紺色の制服を着た海上自衛隊の方でしたが、緑色の制服を着た陸上自衛隊の方を発見。この方からも話を伺うことができました。
Q.「どちらの方ですか?」
A.「私は木更津駐屯地に配属されています。木更津にいるのは、ほとんどが陸上自衛隊のヘリコプター部隊なのですが、日米地位協定の関係でアメリカの基地を我々陸上自衛隊が借りて使っているという状態です。」
Q.「しかしアメリカはほとんど使用していないんですよね、なぜアメリカはそこを手放そうとしないんですか?」
A.「手放すことはないでしょうね。木更津駐屯地には1800メートル級の滑走路がありますし、整備場もあります。つまりアメリカは、故障した飛行機を修理するために、東京湾からも近いという地理的に便利な木更津を保持しているのです。ほとんど我々陸上自衛隊が使用していのには変わりありませんが、いまだに訓練を行うときにはアメリカ軍に対して、基地使用計画書というのを提出している状態です。」
さすがは自衛官。お話を伺うと技術的な話が多かったですね。アメリカ軍の方にしろ、海上自衛隊の方にしろ、いかに自分の任された任務を全うできるかを重点に考えており、いざというときに自分たちはどこまで行動するべきかは政治の決めることだ、というスタンスが垣間見られました。仕事ですから、それは当り前の態度でしょう。
しかしそうした技術的な話を掘り下げていくと、自衛隊がどれほど日本の政治目標に応えられるかというのは、自衛官が現場でなにを感じているかに拠るのではないでしょうか。
軍事を語ることにアレルギーを感じる人が非常に多いですが、それではバランス・オブ・パワー理論にとって肝心なパワーがどれほどかをしっかり見ていないことになります。
もちろん軍事的知識だけでは、すべては決まりません。脅威となるパワーを持つことと、そのパワーを実際に使うのとでは段階が違うからです。残念なことにそうしたことに無頓着な軍事評論家がむやみに対外脅威を煽る現状は、ただでさえ軍事アレルギーの強い日本を一層軍事アレルギーにしています。
問題は、いかに軍事と政治をバランスよく論じるかです。
厚木基地50周年記念ということもあり、日米同盟を批判的に論じる場面がほとんどなかったのは少々残念ではありましたが、中国や北朝鮮の行動をいかに冷静に眺めることができるか、いかに冷静に対処することができるか?というのが東アジア安定における大事なポイントではないでしょうか。ラセットが民主平和論で語ったように、民主主義には戦争のコストを増大させるための仕組みがあります。その仕組みを最大限生かすには、国民が脅威に敏感にならないことが大切です。
締め方がわからず、観念的な話をしていしまいました。そこに反証可能性をもたらすためのものさしが必要ですね(笑)
以上、 1万1千字を超えてしまいました(笑)
読んでくださったかたありがとうございます。